産業用ロボット市場の地域別分析：世界市場と日本の課題

産業用ロボットは、製造業を中心にその重要性が高まり、世界中で急速に普及しています。本記事では、主要市場でのシェアや産業特性について、特に中国、韓国、欧州、米国、そして日本市場について考察します。

産業用ロボットのグローバル市場の拡大

産業用ロボットは、近年急速に普及しており、2018年には世界全体で42.2万台が導入されました。国際ロボット連盟（IFR）の予測によれば、2022年には産業用ロボットの稼働台数が391万台に達する見込みです。特に自動車、電気・電子、金属・機械産業が主な用途として、産業用ロボット市場を牽引しています。中国が最大市場となり、そのシェアは36%を占め、続いて日本、米国、韓国、ドイツが主要な市場を形成しています。

中国市場

中国は、世界最大の産業用ロボット市場を誇ります。2018年には約15.4万台、金額にして54億ドルの産業用ロボットが導入され、全体の36%を占めています。特にスマートフォンなどのエレクトロニクス産業向けのロボット需要が高いですが、近年の貿易問題などの影響により、必ずしも急成長とは言えない状態です。中国政府は「中国製造2025」の目標に基づき、国産ロボットの開発と普及を進めており、国内企業が台頭してきています。

中国国内ブランドのシェアは着実に増加し、特にロボットコントローラなどの部品は国内メーカーから調達されるようになっています。例えば、Estun（南京埃斯頓自動化）やSIASUN（新松机器人自動化）などが代表的な企業です。また、サービスロボット市場の拡大もロボット産業の成長を牽引しており、特に医療や家庭用、公共サービス向けのロボットが注目されています。

韓国市場

韓国市場は、2018年に約3.8万台の産業用ロボットが導入され、世界全体の9%を占めています。韓国は他国と比較してロボット密度が非常に高いことで知られており、製造業の従業員1万人当たりのロボット導入台数は、世界的に見ても非常に高い水準です。韓国の産業用ロボット企業には、現代ロボティックスがあり、国内市場の約4割のシェアを持っています。

現代ロボティックスは、特に溶接ロボットや6軸多関節ロボットを中心に事業展開しており、2020年には売上1兆ウォン（約1,000億円）を目指すなど、積極的に市場拡大を進めています。韓国市場では、産業用ロボットが主に電子機器や自動車産業向けに使用されていますが、最近では物流の自動化を目的としたモバイルサービスロボットの開発が進んでおり、ユニークなロボットソリューションも登場しています。

欧州市場（特にドイツ市場）

欧州市場では、ドイツが最大の市場を誇り、2018年には前年比26%増となる27万台の産業用ロボットが導入されました。ドイツは、自動車産業や金属加工、プラスチック産業など、幅広い分野でロボットの活用が進んでおり、特に産業用ロボットの導入において歴史が長い国です。

ドイツの代表的な企業であるABBやKUKAは、欧州の産業用ロボット市場をリードしています。ABBは、世界初の塗装ロボットを1970年代に開発した企業で、堅牢性が高く、過酷な作業環境でも安定的に稼働するロボットを提供しています。また、KUKAは、自動車産業向けに多くのロボットを提供しており、特にPCベースのロボット制御技術の先駆者としても知られています。両社は欧州市場で強い存在感を誇り、グローバル展開にも力を入れています。

米国市場

米国市場も産業用ロボットの導入が進んでいる重要な地域で、特に自動車産業やエレクトロニクス産業での需要が高いです。米国では、ロボット導入のペースは徐々に増加しており、特に自動車製造業でのロボット使用が広がりを見せています。

2018年には、約4万台の産業用ロボットが米国で導入され、産業用ロボット市場はますます重要な位置を占めています。米国市場における代表的な企業は、ABBやファナック、YASKAWA（安川電機）などがあり、これらの企業はアメリカ市場でも強い影響力を持っています。特に、ABBは自動車だけでなく、金属加工やプラスチックなどの多様な分野で実績を持ち、ロボットの導入が進んでいます。さらに、米国では製造業の再活性化が進んでおり、ロボットの需要が高まっている背景があります。

日本市場の現状と課題

日本市場では、産業用ロボットは比較的成熟していますが、世界市場におけるシェアは低迷しており、特にファナックなどの企業がシェアを拡大する一方で、日本国内のロボット導入には依然として課題があります。

日本の企業は、カスタム仕様のロボットを好む傾向が強く、特に大企業は自社のニーズに合わせた仕様を選択し、ロボット企業に製造させるケースが多いです。このため、ロボット導入が他の国々に比べて進みにくい状況が続いています。日本企業が直面している課題としては、技術力の向上に加え、ロボットを効率的に活用できる経営資源の不足が挙げられます。

また、ロボット導入後の運用やメンテナンスが難しい中小企業に対しては、規格化されたロボットシリーズの供給が求められています。今後、産業用ロボットの普及を進めるためには、こうした課題を解決し、より柔軟な市場への対応が重要となるでしょう。

まとめ

産業用ロボット市場は、世界的に急速に拡大しており、特に中国、韓国、欧州、米国の各市場での需要が顕著です。中国が世界最大の市場を占め、国内メーカーの台頭やサービスロボット市場の拡大が注目されています。韓国では製造業向けのロボット導入が進む一方で、物流分野のロボット開発も注目されています。欧州では、ドイツが産業用ロボットの先駆者として、幅広い産業でのロボット活用が進行中です。

米国では自動車産業を中心にロボットの需要が増加しており、製造業の再活性化が進んでいます。一方、日本市場では、ロボットの導入においてまだ課題が残っており、より効率的で柔軟な対応が求められています。各国・地域ごとの特性に応じたロボット市場の動向は、今後ますます注目されることでしょう。