搬送から食品加工まで進化する産業用ロボットの活用例

産業用ロボットの搬送・移送分野における役割

現代の工場や倉庫では、生産ラインを支える搬送・移送作業にもロボットが欠かせません。製品を正確に運ぶロボットは、効率化と生産性向上に貢献しています。以下に、その代表的な用途と技術的な特長について解説します。

パレタイジングロボット：物流効率化の要

パレタイジングロボットは、工場や倉庫で荷物を台（パレット）に積み上げる作業を自動化するロボットです。効率的な「載せ方」を行うことで、フォークリフトなどによる輸送を容易にします。

特長と活用例

積み上げのパターン設計

運送物のサイズや重さに応じて、最適な積み上げ方を選択。

箱詰め作業

コンベア上で製品を箱詰めするパッケージ工程にも対応。

このロボットは、マテリアルハンドリング（通称「マテハン」：物流最適化のための作業のこと）の中心的な役割を果たし、物流全体の効率化に寄与しています。

プラスチック製品を支える成形品取出ロボット

成形品取出ロボットは、プラスチック射出成形機から成形品を取り出す作業を担います。このロボットの登場により、プラスチック製品の製造効率は大幅に向上しました。

完全自動化も達成

複雑な形状の製品は金型から簡単に外れないことが多く、1台に1人作業員がつき効率が低下する課題がありました。
しかし1960年代以降、自動取出機の開発が進み、現在ではほとんどのロボットが人の手を借りず自動で稼働しています。

応用分野の拡大

プラスチック製品だけでなく、金属成形品の取り出しにも応用され、製造業全体でその需要が拡大しています。

高度な技術が求められるクリーンルーム用ロボット

クリーンルーム用ロボットは、半導体や液晶パネルの製造工程で使用され、厳しいクリーン度の条件を満たす特殊な仕様が求められます。

クリーンルーム用ロボットの特長

徹底的なシーリング

塵や埃の発生を防ぎ、外部からの異物侵入も防ぐ。

負圧化

内部を負圧状態にすることで、クリーン度をさらに向上。

応用例

半導体ウェハや液晶用ガラス基板の搬送。
大型基板（最大3メートル角）を高速かつ正確に運ぶ。

クリーンルーム用ロボットの開発には高度な技術が必要であり、限られたメーカーがその製造を担っています。

食品産業用ロボット：専門的な作業への対応

食品産業では、産業用ロボットが専門的かつ多様な作業をこなしています。特に、食肉加工や弁当の盛り付けといった作業で重要な役割を果たしています。

食肉加工ロボット

食肉は形状や柔らかさが異なり、自動化が難しいとされてきましたが
「X線センサで骨の位置を検知し、アームが肉の動きに追随しながらナイフで切り込みを入れる」
という技術により、1時間に600個もの肉を処理する効率性を実現しました。

弁当盛り付けロボット

センサ技術を駆使し、指定されたおかずを選びトレイに詰める作業を自動化しました。柔らかい食品を傷つけない工夫が施されています。

炊飯システムへの応用

立体型IH炊飯システムという、立体的な配置でロボットが高温の炊飯釜を出し入れするシステムが考案され、これまでの平面的なコンベア移送より省スペース化を実現しました。

まとめ

産業用ロボットは、搬送・移送分野をはじめ、プラスチック成形品の取り出しや食品加工、さらには半導体製造まで、幅広い用途で活躍しています。これらのロボットは、単に人手を置き換えるだけでなく、効率化や精度向上を実現し、さまざまな産業で不可欠な存在となっています。