多様化する産業用ロボットの利用分野と進化する用途別技術

産業用ロボットの多彩な利用分野

産業用ロボットは、国内外で幅広い業種に活用されており、日本市場では特に電気機械（36%）と自動車（29%）が大きな割合を占めています。これに加えて、金属製品やプラスチック加工、食料品製造といったさまざまな業種でも需要が高まっています。一方、世界市場では自動車と電気・電子機器分野への集中度が高く、用途の偏りが見られる点が日本との違いです。

自動車産業を中心に拡大したロボット利用

初期のロボット活用

産業用ロボットの歴史は、自動車産業から始まりました。1970年代、車体のスポット溶接用ロボットが登場し、その後アーク溶接や塗装といった分野へ拡大していきます。この技術革新により、ロボットは組立や搬送など、多様な工程に進出しました。

1980年代の技術革新

1980年代には、サーボモータとマイクロプロセッサを組み合わせた電動アクチュエータ方式が登場。これにより精度が大幅に向上し、自動車以外の機械や電子機器産業への普及が進みました。

2000年代以降の多様化

2000年代になると、製造業全体で多品種少量生産への対応が求められるようになり、ロボットの用途はさらに広がりました。日本では「自動車から多業種へ」という進化が進み、世界市場においても今後同様の傾向が見られると予想されています。

用途別ロボットの活用状況

溶接ロボット

溶接ロボットは、産業用ロボットの普及のきっかけとなった分野です。以下の2種類が代表的です。

スポット溶接

薄鋼板を接合する際に使用。現在、自動車工場ではスポット溶接の9割以上がロボットによって行われています。

アーク溶接

厚板の接合が可能で、自動車フレームや建設機械の製造で活躍。

溶接ロボットは、作業の危険性を軽減するだけでなく、高い精度を実現し、生産効率を向上させました。

塗装ロボット

塗装ロボットは、自動車工場での防爆仕様対応を経て進化しました。

特長

塗装工程では、ロボットが「面」に沿って塗料を均一に塗布。

応用例

現在では、携帯電話や電子機器の塗装にも使用されています。

塗装ロボットは、人間が従事するには過酷な環境をロボットに置き換える形で普及しています。

仕上げロボット

仕上げロボットは、研磨やバリ取りなどの高精度な作業に特化しています。

技術的な進化

力覚センサと画像処理を活用し、熟練作業者の精密な技術を再現。

用途

人工関節のような高精度が要求される部品の加工にも対応。

仕上げロボットの進化により、人手不足が課題となる製造業で、より高精度な作業を実現しています。

組立ロボット

自動車のウィンドウやスペアタイヤの据え付けなど、複雑な作業にも対応しています。

課題

複雑な作業の再現。

人とロボットの協働

センサや緊急停止装置の導入により、安全性を確保。

人との協働を実現する組立ロボットは、産業用ロボットのさらなる普及を促進しています。

特殊用途のロボット

クリーンルーム用ロボット

クリーンルーム内で使用されるロボットは、塵や埃を発生させない特殊仕様です。主に半導体や精密電子部品の製造に使用され、国内外で需要が高まっています。

国内外の違い

国内市場

日本では、クリーンルーム、樹脂成形、機械加工向けロボットの利用比率が高く、多様化が進んでいます。

海外市場

一方、海外では溶接、組立、マテリアル・ハンドリング（搬送）用途が主流で、用途の集中が顕著です。

今後の展望

産業用ロボットは、自動車産業を起点として進化を遂げ、現在では多様な業種で欠かせない存在となっています。技術の進歩に伴い、より高度な機能を持つロボットが開発され、活用分野のさらなる拡大が期待されています。