産業用ロボットを支える駆動系の全貌：アクチュエータから減速機まで

産業用ロボットを動かす駆動系の基礎知識

産業用ロボットの多彩な動きを支える要となるのが、駆動系です。駆動系はロボットの関節やアームなどを動かす仕組みであり、アクチュエータや減速機がその中核を担っています。本記事では、ロボット駆動系の基本構造から最新技術までを解説します。

アクチュエータとは？

アクチュエータの定義と役割

アクチュエータとは、「動作を発生させる装置」の総称です。動力源となるモータやエンジン、さらにそれらの動力を変換する油圧や空圧装置も含まれます。ロボットにおいては、以下の種類に分類されます。

回転型アクチュエータ

軸を回転させるモータが該当。

直動型アクチュエータ

リニアモータなど、直線運動を発生させる装置。

現在の産業用ロボットでは、特に回転型の電気式アクチュエータであるサーボモータとステッピングモータが主流です。

サーボモータとステッピングモータ

サーボモータ

サーボモータは、エンコーダなどの検出器を備え、回転角度や速度を高精度に制御可能なモータです。以下が特徴です。

高精度な制御

回転位置や速度を細かくコントロール可能。

高トルク特性

高速回転時でも十分な回転力を発揮。

用途

精密な動きを求められる部分に最適。

ステッピングモータ

一方、ステッピングモータはパルス信号で動作し、サーボ機構を持たずとも一定の精度で位置決めが可能です。

簡易的な制御

インバータだけで動作制御が可能。

低コスト・小型

構造がシンプルで軽量。

用途

比較的簡易な動作が求められる部分に使用。

使い分け

一般的には、精密な動きが必要な部分にサーボモータを使用し、コストやサイズを重視する箇所にはステッピングモータを用いることで、効率的な設計が可能になります。

油圧と空圧のアクチュエータ

特徴

油圧式と空圧式アクチュエータは、小型で高い力を発生できるため、狭いスペースや特定の用途で重宝されています。

油圧式

流体（油）の圧力を利用し、力強い動作が可能。精密な制御には補正プログラムが必要。

空圧式

軽量で人に優しい動作が可能なため、着用型ロボットなどに採用。

課題

両者に共通する課題は正確な制御です。圧力や流体の体積変化により位置ずれが生じやすいため、流量の監視や補正プログラムがあわせて導入されます。

次世代のアクチュエータ技術

将来のロボット開発では、以下のような新しいアクチュエータ技術が注目されています。

超音波モータ

特長

高精度な位置決めが可能で、無通電でも位置保持が可能。

用途

静音性が求められる医療機器やサービスロボットへの応用が期待されています。

人工筋肉

特長

形状記憶合金などを利用し、柔軟な動きが可能。

用途

生体模倣ロボットや、人と協働するロボットに応用。

マイクロアクチュエータ

特長

MEMS技術を活用し、ミクロン単位の動作を実現。

用途

医療用のマイクロロボットや精密作業用ロボット。

磁性流体

特長

磁場で制御可能な流体を用い、柔軟性と力強さを両立。

用途

将来的には、医療や特殊環境でのロボットに活用が期待されています。

減速機の役割と種類

電気モータは高速回転が得意ですが、大きなトルクを発生させるには減速機が不可欠です。以下は主要な減速機の種類と特徴です。

平歯車減速機

特長

シンプルな構造。複数段を組み合わせる必要あり。

用途

一般的なロボットで広く使用。

遊星歯車減速機

特長

大きな減速比を得やすく、同軸構造が可能。

用途

コンパクトさが求められるロボット。

ハーモニックドライブ

特長

楕円形の差動を利用し、同軸で大きな減速比を実現。

用途

二足歩行ロボットや高精度な産業用ロボットで使用。

まとめ

産業用ロボットの駆動系は、アクチュエータと減速機の選定・組み合わせが重要です。サーボモータやステッピングモータ、油圧式や空圧式アクチュエータの特徴を理解し、用途に応じた選択が求められます。また、次世代のアクチュエータ技術が加わることで、さらなる性能向上が期待されています。