PLCの機能拡張を実現する「ユニット」の基礎知識

はじめに

PLC（プログラマブル・ロジック・コントローラ）は、多様な機器の制御を自動化する装置として、FA（ファクトリーオートメーション）の分野で重要な役割を果たしています。その機能をさらに強化するために用いられるのが「ユニット」です。ユニットは、標準機能だけでは対応できない制御や通信、データ処理を実現し、複雑な設備でも効率的な制御を可能にします。この記事では、PLCのユニットの種類とその活用方法について解説します。

1. 高機能ユニットとは？

PLC本体には基本的な制御機能が備わっていますが、より高度な制御や特殊な作業には高機能ユニットを追加する必要があります。高機能ユニットは、PLCのベースユニットや拡張バスに接続され、特定の用途に応じた制御機能を追加します。これらはメーカーによって「インテリジェントユニット」や「特殊ユニット」などと呼ばれることもあります。

主な高機能ユニットの種類は以下の通りです：

アナログ入力・出力ユニット（A/D・D/A変換ユニット）

アナログ信号をデジタル信号に変換し、センサからのデータを読み取ります。

高速カウンタユニット

高速で変化する信号を正確にカウントします。

位置決めユニット

モータの位置や動作を数値で正確に制御します。

ネットワークユニット

PLC同士やPCなど外部機器とのデータ共有や通信を行います。

温度調節ユニット

温度管理が必要な設備で、PID制御を用いて温度を自動調節します。

これらのユニットは、独自のバッファメモリーを持っており、PLC本体とは独立して制御が可能です。ラダープログラムを用いるか、専用の設定ソフトウェア（コンフィグレータ）を使用してパラメータを設定することが一般的です。

2. アナログ入出力ユニットによるデータ収集と出力

多くの設備では、温度、圧力、位置などの物理的な情報を管理するために計測型センサが使われます。アナログ入力ユニットは、こうしたセンサから送られてくる電流や電圧のデータをデジタル信号に変換し、PLCのバッファメモリーに保存します。これをA/D変換（アナログ→デジタル）と呼びます。

例えば、温度センサが0〜5Vの範囲で信号を出力する場合、A/D変換ユニットが0〜4000までの数値に変換するのであれば、0Vが0、5Vが4000としてメモリーに保存されます。これにより、PLCはバッファメモリー内の値から温度を計算し、必要な制御を実行できます。逆に、PLCから外部機器に電圧や電流信号を出力する際は、D/A変換ユニットを使い、デジタル信号をアナログに変換します。

3. 精密な動作を実現する位置決めユニット

工場のラインや機械装置の動きには、精密な位置決めが求められる場面が多くあります。この際、サーボモータやステッピングモータといった数値制御型モータの動作を制御するのが位置決めユニットです。位置決めユニットはパルス信号を送ることで、モータを動かす角度や速度を正確に管理します。

位置決めユニットのバッファメモリーに回転数や速度、移動距離のデータを設定し、ラダープログラムを通じて開始信号を送ることで、モータが指定された位置に正確に移動します。特に、機械の初期位置に戻る「原点復帰」が重要で、これにより次回の動作でも同じ位置から開始できるようになります。

4. ネットワークユニットによるデータ共有と通信

工場全体の自動化システムでは、複数のPLCやコンピュータが連携して動作することが一般的です。PLC同士、あるいはPLCと外部機器との通信を円滑に行うために使われるのがネットワークユニットです。主要なネットワークユニットには、以下の種類があります：

PLCネットワークユニット

複数のPLCのCPUをネットワークで接続し、データを共有するためのユニット。光ファイバーや同軸ケーブルを用いることで、高速かつ安定した通信が可能です。

リモートI/O・オープンフィールドネットワーク

PLCの入出力装置を遠隔地に設置し、通信で操作することを可能にします。配線の削減と柔軟なシステム構築を実現するため、デバイスネットやCC-Linkなどが利用されます。

シリアルコミュニケーションユニット

センサや計測器、バーコードリーダなどの機器とシリアル通信を行うためのユニットです。PLCのプログラムからこれらの外部機器を操作し、データを取得できます。

イーサネットユニット

LANに接続して、PCとデータの送受信を行ったり、PLC同士のネットワークを構築します。PLCプログムの監視や更新をリモートで行うことも可能です。

5. データ処理に役立つユニット

一部の高機能ユニットでは、複雑なデータ処理を効率的に行うための専用機能が備わっています。たとえば、温調ユニットは、温度センサからのデータを基にPID制御を行い、温度を一定に保つための出力を計算します。温度管理が必要な生産ラインでは欠かせない機能です。

また、PLCのデータメモリー間でのデータ交換や、外部データの読み書きにもユニットが使われます。高機能ユニットのバッファメモリーに保存されたデータは、ラダープログラムの命令（MOVやFROMなど）を用いて読み出しや書き込みが可能です。PLCの処理を効率化するために、これらのユニットは高度なデータ管理や外部機器とのデータ共有に役立っています。

まとめ

PLCのユニットを利用することで、標準の制御機能に加え、計測データの取り扱い、モータの位置決め、ネットワークを介したデータ共有など、さまざまな機能が実現可能になります。ユニットによって柔軟かつ効率的な制御システムを構築することができるため、複雑なFA機器の制御においても信頼性を高めることができます。

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