PLCとは何か？リレー制御との違い – 工場自動化を支える制御装置の基礎知識

はじめに

PLC（Programmable Logic Controller）は、工場の自動化装置で広く使用される制御機器です。日本では「プログラマブルコントローラ」や「シーケンサ」とも呼ばれ、リレーシーケンス回路をソフトウェアで実現する装置として、製造現場で非常に重要な役割を果たしています。今回はPLCの仕組みや利点、リレー制御との違い、そして各PLCのタイプについて説明します。

PLCとは？

PLCは「Programmable Logic Controller」の略で、「プログラム可能な論理制御装置」を意味します。元々はリレーを使ったシーケンス制御をプログラムで実現するための装置として開発されました。PLCは工場の自動化装置の制御に特化しており、スイッチやセンサなどからの入力信号に応じてモータやソレノイドなどへの出力を制御します。PLCにプログラムを転送して記憶させることで、単独で様々な自動制御が可能になります。

なぜPLCが工場の自動化に適しているのか

PLCは工場の自動化において不可欠な存在で、リレー制御方式よりも多くの利点があります。主な理由は以下の通りです：

リレー制御からの移行が容易

工場の自動化装置にはリレーシーケンスで制御されるものが多く、PLCもリレー制御に基づいたラダープログラム（ラダー図）で操作します。これにより、リレー制御の知識を持つ技術者が比較的簡単に制御プログラムを作成でき、リレー制御からPLCへの移行がスムーズです。

プログラムの柔軟性

リレー制御では回路変更のたびに配線のやり直しが必要ですが、PLCではプログラムを変更するだけで制御内容を簡単に更新できます。これにより、生産ラインの変更や装置の拡張に迅速に対応可能です。

省スペースと高耐久性

PLCは小型で耐久性が高く、制御盤内に収めることができるため、過酷な環境でも動作します。ハードディスクなどの機械的な記憶装置がないため、振動や温度変化にも強く、突然の停電からの復旧も容易です。

高度な機能

タッチパネルとの接続、データの通信、他の計測機器やPCとのネットワーク通信、さらには高精度な位置決めなどもPLCのプログラムで実現可能です。こうした拡張性により、PLCは多様な制御ニーズに応えることができます。

リレー制御とPLC制御の違い

リレー制御は物理的なリレーを使って回路を構成する方法で、制御回路を構築するためには多くの配線が必要となります。一方、PLC制御では、リレーの配線をソフトウェアに置き換えるため、複雑な配線をプログラムで簡略化できます。

PLCでは、各機器の信号線をPLCの入出力端子に接続し、ラダープログラムで信号の入出力を関連付けます。リレー制御のように物理的な接続が不要なため、制御盤はコンパクトで整然としたものになります。また、ラダープログラムはリレー回路と似た表現で記述されるため、リレー制御の知識を持つ技術者がそのまま操作できます。

PLCの種類と用途

PLCには、システムの規模や制御ニーズに応じていくつかのタイプがあります。それぞれの特徴と用途を以下にまとめます。

パッケージタイプ

CPU、電源、入出力ユニットが一体化されたコンパクトなタイプで、小規模なシステムに適しています。安価で取り扱いやすい反面、拡張性には限りがあるため、機能が限定される場面では有効です。

ビルディングブロックタイプ

中規模のシステム向けで、必要に応じてユニットを追加できるため、ある程度の拡張性を備えています。例えば、装置に新しい機能を追加する際にもユニットを取り換えるだけで済むため、柔軟性が高い点が特徴です。

ベース装着タイプ

大規模なシステムや高機能な制御を必要とするシステムに向いています。CPU、電源、入出力ユニットを自由に組み合わせることができ、将来の拡張も考慮して設計可能です。例えば、入出力信号が増加することが予測される生産ラインでは、大きめのベースユニットを選び、必要に応じてユニットを追加する形で対応できます。

PLCの基本構成

PLCは通常、電源、CPU、入力ユニット、出力ユニットで構成されています。

電源ユニット

CPUユニットに電力を供給する専用のDC電源で、PLCが安定して動作するための基盤です。

CPUユニット

PLCの頭脳であり、制御プログラムの処理を行います。多くのCPUユニットはパソコンと接続してプログラムの転送やデータ通信を行えるため、制御盤の外部からも操作できます。

入力・出力ユニット

入力ユニットにはスイッチやセンサが接続され、出力ユニットはモータやランプなどの制御対象機器に接続されます。PLCはこの入力と出力をプログラムで関連付け、目的の動作を実現します。

PLCとパソコンの連携

PLCはデータ処理や高度なデータ管理機能ではパソコンに劣りますが、パソコンと連携させることでその欠点を補うことができます。例えば、PLCが工場内の機械を制御し、データの集計や分析はパソコンで行うといった使い方が一般的です。こうしたシステムは、リアルタイムでのデータ取得と分析に優れ、製造現場の効率化を促進します。

PLC導入による工場の自動化効果

PLCは、その柔軟性や高耐久性から、工場の生産ラインや自動化装置の制御に幅広く採用されています。特にリレー制御からの置き換えにより、次のような効果が期待できます：

配線の簡素化

配線の手間が大幅に削減されるため、設置・変更作業が効率化されます。

保守性の向上

エラーが発生した場合も、ラダープログラムの修正だけで対応可能なため、トラブル時の対応が迅速です。

作業の安全性向上

安全機能を簡単に追加できるため、作業者の安全を守りながら効率的に生産を行えます。

まとめ

PLCはリレー制御をソフトウェアで実現する制御装置で、工場の自動化に最適な装置として活躍しています。システム規模に応じたPLCのタイプ選定や、PCとの連携によるデータ処理の強化により、効率的で柔軟な制御システムを構築可能です。PLCの基礎知識を理解することで、工場の自動化や生産ラインの最適化がスムーズに進むことでしょう。