FA機器の制御に欠かせない、リレーの3つの機能

はじめに

リレーはFA機器に欠かせない制御装置で、シンプルな構造ながら「接点信号の置換え機能」「論理演算機能」「記憶機能」といった重要な機能を持っています。このため、リレーは様々な機器の自動制御に利用されます。本記事では、リレーの各機能とその応用について具体例を交えながら解説し、FA機器の自動化におけるリレーの役割を明らかにします。

1. リレーの接点信号の置換え機能

リレーの基本機能の一つは、スイッチやセンサのオンオフ信号をリレーの接点信号に置き換える「接点信号の置換え機能」です。この機能を使うと、遠く離れた場所や大きな電力が必要な装置への信号伝送が簡単になります。例えば以下のような利点があります：

信号の中継機能

工場で遠く離れた機器を操作する際、電線の抵抗によって信号の強さが低下することがあります。リレーは信号を中継することで信号強度を回復し、安定した動作を可能にします。例えば、遠くにあるランプに電流を供給したい場合、リレーを途中に設置して信号を中継すると、電圧降下を防ぎ、正常な点灯が実現します。リレーが「継電器」とも呼ばれるのはこのような中継機能があるためです。

接点の保護機能

高電流を直接スイッチでオン・オフする場合、スイッチが摩耗しやすくなります。例えば、小さなスイッチでモーターの電源を直接切り替えると、スイッチの接点がすぐに劣化してしまいます。そこで、リレーを使って小さなスイッチでリレーのコイルを動作させ、リレーの接点で大きな電流を切り替えることでスイッチを保護できます。この方法により、スイッチの寿命が延び、安定した動作が実現します。

接点の増設

スイッチやセンサが持つ信号をリレーで置き換えると、複数の接点を増設して様々な機器を同時に操作することができます。例えば、押しボタンスイッチが1つしかない場合、通常は1つの機器しか動作させられませんが、リレーを介せば複数の接点が追加できるため、1つのスイッチ操作で複数の機器を同時に制御できるようになります。

2. リレーの論理演算機能

リレーには、接点を組み合わせることで論理演算機能を実現することができます。これにより、機器が特定の条件を満たした場合にのみ動作するような制御が可能です。以下はリレーを使った代表的な論理演算です：

NOT回路

NOT回路は、接点の動作を反転させる構成ができます。例えば、スイッチが押されているときにオンになるa接点のNOT回路は、スイッチが押されていないときにオンになるb接点として機能します。

AND回路

AND回路は、複数の接点を直列に接続することで構成され、すべての条件が揃ったときにのみ動作する仕組みです。例えば、工場のベルトコンベアを動作させる際、「安全カバーが閉じている」かつ「緊急停止ボタンが押されていない」場合にのみ動作させるように設定することができます。この場合、カバーのスイッチと緊急停止ボタンを直列接続し、両方がオンになったときのみコンベアが動作します。

OR回路

OR回路は、接点を並列に接続することで構成され、いずれかの条件が満たされると動作する仕組みです。例えば、複数の作業員が異なる場所から操作できるようにするため、いくつかのスイッチを並列接続し、どのスイッチを押しても機器が動作するようにします。これにより、どの作業員も任意の場所から機械を操作することが可能になります。

こうした論理演算により、複雑な制御をシンプルなリレー回路で実現でき、FA機器の効率的な動作が可能になります。

3. リレーの記憶機能（自己保持回路）

リレーには、自己保持回路によってオン状態を記憶する機能があります。自己保持回路は、機器が一度オンになったら、スイッチが戻ってもオン状態を保持し続ける仕組みです。この記憶機能により、装置が特定の状態を保持でき、次の操作条件が整うまで継続動作させることができます。

自己保持の仕組み

リレーの接点が一度閉じると、その状態が継続するため、自己保持機能が働きます。例えば、スタートスイッチを押してベルトコンベアが動き始めると、そのスイッチを離してもコンベアは動作し続けます。停止したい場合は、別のスイッチでリレーコイルへの電流を遮断し、自己保持を解除します。これにより、動作が保持され、次の操作条件が整うまで安定して動作します。

応用例: エレベーターの記憶機能

エレベーターが特定の階に到着してドアを開けた場合、その後ドアが閉まっても、階に到着したという記憶が保持されます。この記憶機能があるため、エレベーターは人の乗降が完了するまでその階に留まり、その後に自動で次の階に移動します。また、呼び出しボタンを押した情報も記憶されるため、すぐに次の目的地に向かうことができます。

リレーを活用したシーケンス制御の応用

リレーの接点置換え機能や記憶機能を組み合わせることで、FA機器の自動制御を進める「シーケンス制御」が可能です。シーケンス制御は、装置の動作順序を設定し、効率的かつ安全な自動化を実現します。

ベルトコンベアの自動停止

コンベアに載せられた物品が移動し、光センサがオンになるとコンベアが自動で停止する制御を自己保持回路で行うことができます。また、タイマリレーを組み込むことで、物品がセンサを通過した後に一定時間経過してから停止する設定も可能です。こうした制御により、精密な動作が実現し、作業効率の向上に繋がります。

まとめ

リレーは、FA機器の自動制御において、接点信号の置換え機能、論理演算機能、記憶機能を駆使し、様々な制御を実現する重要な装置です。また、タイマリレーを活用すれば、動作のタイミングも自在に調整できます。シーケンス制御におけるリレーの役割は、FA機器の効率的な運用に不可欠であり、リレーの仕組みを理解することがFA機器のメンテナンスや運用にも役立ちます。