FA機器とシーケンス制御の基礎 – 産業自動化の鍵となる技術

FA機器は、生産現場や工場における自動化を実現するために不可欠な存在です。その基礎的な動作原理として「シーケンス制御」が挙げられ、これによってFA機器は複雑な手順を正確かつ効率的に実行します。本記事では、シーケンス制御の基本的な仕組み、代表的な制御パターン、FA機器における具体例を挙げながら解説します。

シーケンス制御とは

シーケンス制御は、日本工業規格（JIS）によると「あらかじめ定められた手順や順序に従い、機械や装置の各段階を逐次的に進める制御」と定義されています。私たちの日常生活における自動洗濯機やエアコン、自動ドアなど、あらゆる場面で使われる制御技術の一つです。FA機器では、動作順序を制御回路に組み込み、リレーやスイッチを利用して動作を実行します。

シーケンス制御の目的

シーケンス制御は、機械や装置が意図した順序で動作することを目的としています。例えば、テレビの操作では「電源を入れる」「チャンネルを変更する」といったステップが存在しますが、これもシーケンス制御の一例です。FA機器の動作では、各工程が正確に行われることが必要とされ、装置の状態を確認しながら次の動作に移るシーケンス制御が活用されます。産業用ロボットなどにおいても、例えば品物を持ち上げるときの一連の動作順序がシーケンス制御で定義されています。

シーケンス制御の3つの基本パターン

シーケンス制御には大きく分けて3つの制御パターンが存在し、FA機器の自動制御に活用されています。

条件制御

条件制御は、特定の条件が満たされたときに機器が自動的に動作する制御方法です。例えば、暗くなると自動で点灯する街灯や、人が近づいたときに開く自動ドアなどが該当します。センサーが環境を検知し、条件を満たした際に装置が動作するため、迅速な反応が求められる場面で用いられます。

時間制御

時間制御は、特定の時間が経過した後に装置が動作する方法です。信号機が一定の時間ごとに信号を切り替えるのが典型的な例であり、また、エスカレーターが一定時間後に停止する省エネ型システムもこの時間制御に分類されます。この制御には「タイマー」が使用され、設定された時間経過後に制御信号を出力します。

順序制御

順序制御は、決められた手順に従って装置が次々に動作する制御方法です。自動洗濯機では「注水→洗い→すすぎ→脱水」という手順が設定されており、ボタンを押すだけでこの一連の動作が自動的に行われます。工場の自動生産ラインでも同様に、順序制御が使われて複雑な生産工程がスムーズに進行します。

FA機器におけるシーケンス制御の実例

自動洗濯機のシーケンス制御

自動洗濯機は、シーケンス制御を駆使して「洗い」「すすぎ」「脱水」という各工程を順次実行します。例えば、スタートボタンを押すと洗濯が始まり、水位センサーによって必要な水量が検知され、注水が停止するという一連の動作が条件制御によって実現されています。さらに、洗い工程ではモーターが設定時間に応じて動作し、その後、逆回転する動作は順序制御によって制御されています。

缶飲料の自動販売機

自動販売機のシーケンス制御では、まずお金を投入すると購入可能な商品に対応するボタンのランプが点灯し、ボタンを押すと商品が排出されます。このように「お金を入れる→ランプ点灯→ボタン確認→商品排出→釣銭返却」という手順が正確に繰り返されるため、消費者は安心して利用できます。ここでは、各操作が順序よく行われるため、シーケンス制御が重要な役割を果たしています。

自動券売機

自動券売機もシーケンス制御の応用例であり、特に最近のタッチパネル式券売機では、コンピュータ制御が組み込まれています。乗車券の販売操作においては、「お金を投入→表示ランプ点灯→タッチパネルでの操作確認→切符の発券」という流れで動作し、機械的なミスが防止されます。タッチパネルが使用されることで、視覚的にわかりやすく操作できるため、利便性が向上しています。

シーケンス制御の導入によるメリット

FA機器にシーケンス制御を導入することで、人間の手による操作が不要となり、ミスや手間が大幅に削減されます。また、設定された順序に従って動作するため、安全性と効率性が高まります。例えば、自動販売機において「先にお金を入れないとボタンが押せない」という動作順序が確立されているため、誤操作が防止されるのと同様に、FA機器の運用でも誤った操作による事故を防ぐことが可能です。

まとめ

シーケンス制御はFA機器における動作を支える重要な技術であり、条件制御・時間制御・順序制御といった3つのパターンが機器の自動化を実現します。自動洗濯機や自動販売機、自動券売機といった身近な機器にも応用されており、産業現場においても複雑な作業を効率的に遂行するための基盤となっています。

シーケンス制御を理解することは、FA機器の動作原理を深く知る上で欠かせません。