PLCプログラミングの基礎とツール

はじめに

PLC(プログラマブルロジックコントローラ)を使った制御は、工場の自動化や設備の管理に欠かせない要素です。PLCで機器を制御するには、PLC本体だけでなく、専用のプログラミングツールやソフトウェアも重要です。この記事では、PLCプログラミングに必要な基礎知識、開発ソフトウェアの役割、そしてデバッグやメンテナンスの方法について解説します。

PLCプログラミングに必要なツールと手順

PLCのプログラミングには、次のツールと手順が必要です。

プログラミングツール

PLCのプログラムはリレー回路のような形をした「ラダー図(ラダープログラム)」で設計しますが、実際にはラダー図を「ニーモニクコード」という機械語に変換してPLCに書き込みます。現在は、パソコンの専用ソフトウェアでラダー図を作成し、自動でニーモニクコードに変換する方法が一般的です。

プログラム開発ソフトウェア

プログラム開発ソフトウェアは、PLCメーカーが製品に合わせて提供する専用ソフトウェアです。例えば、「ラダーエディタ」「シーケンサプログラミングソフトウェア」と呼ばれるものもあります。このソフトウェアでラダー図を作成し、PCに保存しておくことが可能です。

通信ケーブル

PCとPLCを接続してプログラムを転送するためには、通信ケーブルが必要です。機種によりRS232C、RS422、USB、Ethernetなどの通信手段を使用します。

ラダー図とニーモニクコードの変換

ラダー図はリレー回路の動作を視覚的に示す図式ですが、PLCが理解できるのはニーモニクコードです。開発ソフトウェアでは、ラダー図をニーモニクコードに自動変換してPLCのCPUに書き込むため、作成したプログラムを迅速にPLCで動作させられます。

ニーモニクコードとは?

ニーモニクコードとは、PLCプログラムをPLC本体が理解できる形式に変換したコードのことです。もともとリレー制御の回路図に似た「ラダー図」で設計されるPLCプログラムですが、このままではPLCに直接書き込むことができません。PLCが実際に制御を行うためには、ラダー図をニーモニクコードに変換する必要があります。

ニーモニクコードは、命令ごとに短縮した記号や番号を用いて記述されるため、人間にも理解しやすいように工夫されています。例えば、あるリレーがオンする条件を示すために、「LD」(Load)、「AND」、「OUT」(Output)といったニーモニク(略記号)を使います。このコードは簡潔でわかりやすく、特定の命令がどのような動作をさせるかを表現するため、効率的にプログラムの内容を記述できます。

プログラム開発ソフトウェアの機能と使い方

PLCのプログラム開発ソフトウェアには、ラダープログラム作成以外にも重要な機能が多数備わっています。以下は主な機能とその使い方です。

プログラムエラーチェック機能

作成したプログラムにエラーがないかをチェックする機能で、入力ミスやロジックの不備などを事前に検出します。これにより、実際に機器を動かす前にプログラムの不具合を確認できます。

入出力(I/O)割り付け設定

PLCの入出力ユニットを正しく設定するための機能です。入出力ユニットを接続した際に「どのユニットがどの番号であるか」を設定し、PLCが各装置の信号を適切に認識できるようにします。

パラメータ設定

PLC本体や増設ユニットの初期設定を行う機能です。PLCの動作や条件を管理するため、各ユニットの動作範囲や仕様に応じたパラメータを設定します。これにより、PLCが正確な動作を行うための基盤が整います。

モニタ機能

プログラム開発ソフトウェアは、PLCの動作状況をリアルタイムでモニタリングする機能も持っています。この機能を利用すると、PLCや接続機器の動作状況をPC画面上で確認でき、信号のオン・オフやデータの状況を把握することが可能です。動作確認やメンテナンス作業で非常に役立つ機能です。

強制操作とデータ設定

モニタ機能を使って、特定のリレーを強制的にオンオフしたり、メモリのデータを設定したりすることができます。例えば、制御プログラムの動作確認中に特定の出力をオンにして機械をテスト稼働させたり、入力信号を模擬的に変化させて機器がどのように反応するか確認できます。

PLCプログラミングの流れ

PLCのプログラミング運用の流れは以下の通りです。

①ラダープログラムの作成

プログラム開発ソフトウェアを使ってラダープログラムを作成します。リレー回路に似た直感的な操作でプログラムが設計できるため、リレー制御の知識を持つ人にもわかりやすい仕組みです。

②エラーチェックとI/O設定

作成したプログラムのエラーチェックを行い、問題がなければPLC本体に接続する入出力ユニットを設定します。

③プログラムの転送

完成したラダープログラムをニーモニクコードに変換し、PCからPLCへ転送します。この際、通信ケーブルを介して転送するため、PLCの通信ポートに合ったケーブルを準備する必要があります。

④テスト運転とモニタリング

PLCにプログラムが転送されたら、テスト運転を行い、モニタ機能で実際の動作を確認します。モニタリングにより、リレーのオンオフやデータの変化が正確に行われているかをリアルタイムでチェックできます。

⑤デバッグと修正

プログラムに問題が見つかった場合、再度プログラムを修正し、再びPLCへ転送します。デバッグの際にはモニタ機能で確認しながら修正ができるため、効率よくプログラムの完成度を高められます。

プログラム開発ソフトウェアの活用によるメンテナンス

PLCプログラミングでは、モニタ機能によって、プログラムのメンテナンスやデバッグが円滑に行えます。プログラム開発ソフトウェアのモニタ機能は、次のような場面で役立ちます。

不具合の発見と修正

プログラムの不具合が発見された場合、特定の信号を強制的にオンオフしたり、メモリの値を変更することで、プログラムの問題点を調査できます。

PLCの動作確認

入出力信号の状態を確認し、出力が期待通りの動作をしているか、また入力信号が正しく受信されているかを確認します。異常が見つかれば即座に修正でき、制御装置全体の信頼性を高められます。

メンテナンス性の向上

モニタ機能で常にPLCの状態を確認できるため、予防的なメンテナンスも容易です。定期的なチェックや、予期せぬ停止に備えた対応策の検討が可能になり、ダウンタイムのリスクを抑えられます。

まとめ

PLCのプログラミングには、専用のプログラム開発ソフトウェアとPC、通信ケーブルが必要です。ソフトウェアは、ラダープログラムの作成から転送、動作確認、デバッグ、メンテナンスまで一貫して活用でき、PLCによる制御を効率的かつ正確に行うための要となります。PLCのプログラミングに慣れることで、より迅速で柔軟な自動化制御が実現し、工場の生産性向上にも大きく貢献できるでしょう。

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