産業用ロボットの種類と特徴：座標系から関節構造まで

1. 産業用ロボットの分類方法

産業用ロボットは、さまざまな用途や環境に対応するため、いくつかの観点から分類されています。代表的な分類は以下の通りです。

作業別

用途に応じて加工用、組立用などの異なる作業に特化したロボット。

大きさ

設置場所や作業内容に合わせたサイズ。

駆動源

電動、油圧、空気圧など、動力源による違い。

座標系

位置と姿勢を制御するための座標系。

運用形態

用途に応じた運用方法。

制御方法

動きの正確さや作業範囲に基づいた制御方法。

2. 座標系の役割と種類

ロボットが動作するためには、位置や姿勢の基準となる「座標系」が必要です。座標系は、ロボットが作業空間内のどの位置にいるかを数値で表現し、位置の制御や姿勢の調整に役立ちます。主な座標系の種類は下記のとおりです。

直交座標系

ロボットのベースを基準にX・Y・Z軸で位置を表す座標系。位置の把握がしやすく、ベース座標系とも呼ばれます。

ツール座標系

ハンドやツールの先端を基準に座標を設定するもので、ツールの位置と向きを自由に制御するのに使用されます。

ワールド座標系

地面または作業台を基準にした座標系です。

メカニカルインターフェース座標系

手首部分に設定される座標系で、ツールの取り付け位置の基準として使います。

ユーザー座標系

作業者が定義した独自の座標系で、特定の作業や操作に合わせて設定可能です。

3. 自由度と関節の構造

産業用ロボットの動作範囲は、「自由度」という概念で表されます。自由度は、ロボットの各関節（軸）が独立して動ける方向数を表し、通常は「6自由度」が一般的です。6自由度があれば、3次元空間内で任意の位置に向けて自在に動かせます。6軸ロボットの関節の役割は下記のとおりです。

1軸（旋回）

ロボットの基部での回転運動。

2軸（前後）

肩の動きで、アームの上下運動を制御。

3軸（回転）

肘の曲げや伸ばしで、アームを前後に動かす。

4軸（腕の回転）

アームの軸の回転運動。

5軸（手首の曲げ）

手首の上下運動。

6軸（指先のひねり）

手先の回転運動で、アームの方向を自由に変更。

4. 座標系によるロボットの動作制御

産業用ロボットは、作業ごとに適した座標系を使用し、動作を正確に制御します。例えば、特定の部品の加工や細かい組み立てが求められる作業では「関節座標系」が活用され、部品の位置が異なる場合には「ツール座標系」を利用して適切な位置を保持します。

5. 多関節型ロボットの種類

産業用ロボットの中でも、関節の数と配置により以下のように分類されます。

垂直多関節型ロボット

6軸構造が一般的で、溶接や搬送などに使用されます。動作の自由度が高く、複雑な作業が得意です。

水平多関節型ロボット

4軸の構造が主流で、組立作業に適しています。一方向からの作業が多い場面で効果的です。

パラレルリンクロボット（デルタロボット）

並列構造で高速動作が可能で、食品などの軽量物の搬送や仕分けに向いています。

6. 適切な座標系設定と安全な運用

ロボットの導入においては、適切な座標系の設定が正確な動作と安全性の確保に不可欠です。作業に応じた座標系の選択やプログラムの設定が求められます。

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