協働ロボットの特徴と活用メリット：人との安全な共存を実現する次世代ロボット

1. 協働ロボットとは

従来の産業用ロボットは高出力で動作するため、人とロボットの間に安全柵を設置し、物理的に分離することが義務付けられてきました。これは労働安全衛生規則により、ロボットのモータ軸の出力が80ワットを超える場合に安全柵の設置が必須とされているためです。しかし、2013年の規制緩和により、「協働運転要求事項」の条件を満たせば、同じ空間で人と作業する「協働ロボット」の安全柵なしでの運用が可能になりました。

2. 協働ロボットの4つの安全要件

協働ロボットは、人とロボットが安全に同じ空間で働くための国際規格（ISO 10218-1）に基づく以下の4つの要件のうち、少なくとも1つ以上を満たすことが求められます。

監視された安全停止

ロボットの作業エリアに人が侵入すると即座に停止する機能。

ハンドガイド機能

人が直接ロボットを手で操作するモードで、非常停止ボタンや速度監視機能が装備されています。

速度および距離の監視

ロボットと人の距離や速度を監視し、基準値を超えると停止する機能。

動力と力の制限

ロボットの出力や発生力を制限し、一定基準を超える場合は自動停止します。

これらの安全機能により、協働ロボットは人と共存する安全性を確保しています。

3. 協働ロボットの種類

協働ロボットは、作業内容や用途に応じて以下のように分類されます。

単腕ロボット

1本のアームで作業を行うタイプ。設置場所を選ばず、狭いスペースでの作業に適しています。

双腕ロボット

2本のアームで両手を使った作業が可能。人の手の動きを模倣した作業や複雑な工程を得意とします。

また、関節の構造によって以下のように分類されます。

垂直多関節型

立体的な作業が得意で、搬送などに向いています。

水平多関節型

平面的な作業が得意で、検査工程などで多用されます。

4. 協働ロボットのメリット

協働ロボットの登場により、自動化がさらに柔軟で手軽になり、さまざまな製造業において以下のようなメリットが期待されています。

人手不足の解消

ロボットが単純作業を担い、熟練作業者はより高度な作業に集中できます。

小型化・軽量化

協働ロボットは軽量でコンパクトな設計のものが多く、狭いスペースにも設置可能です。

プログラミングが容易

タブレット端末によるプログラミングや、アームを直接動かして教示できる「ダイレクトティーチング」機能を備え、不慣れな作業者でも操作しやすい設計です。

多品種少量生産に対応

多様化が進む製品を短期間で生産するために、協働ロボットは同一のラインで多種の製品に対応可能です。

5. 従来の産業用ロボットとの違い

従来の産業用ロボットは、教示（プログラミング）が複雑で、安全柵などの周辺機器の設置も必要でした。しかし、協働ロボットでは、タブレットや手動での簡易的な操作が可能で、周囲の安全対策もシンプルです。これにより、設置や操作がスムーズになり、幅広い生産ラインでの導入が進んでいます。

6. 安全対策の重要性

協働ロボットの導入には安全基準を満たしていることが前提ですが、実際の運用には十分なリスクアセスメントが欠かせません。人と同じ空間で動作するため、ロボットの動作速度や力の制御が適切に行われるよう、常に安全性を意識する必要があります。

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