産業用ロボットの位置決め精度を高めるための重要ポイント

産業用ロボットの位置決めと精度に関する課題

産業用ロボットにおいて、指定された位置に正確に手先を到達させる「位置決め」は、ロボットのパフォーマンスと生産性に大きく関わります。しかし、位置決めが思うようにいかないケースもあり、その原因は多岐にわたります。ここでは、位置決めにおける不具合と、関連する精度の制御方法について解説します。

位置決めの不具合の主な要因

1. メカニズムのガタや振動

サーボモータが搭載された産業用ロボットでは、メカニズムの経年劣化や摩耗、さらには位置ずれによって位置決めの精度が低下することがあります。特に減速機周辺のガタつきが影響し、制御システムが適切に動作しても、実際の位置がずれることがあります。このような場合、メカニズムの再調整や部品の交換を検討します。

2. 指令位置や単位の誤り

位置決め指令に誤りがあると、想定とは異なる場所に移動してしまいます。例えば、ミリメートル(mm)や角度(°)で設定されている指令値が誤っている場合、位置ずれが生じやすくなります。各単位を確認し、指令と動作にズレがないかを確認します。

3. コントローラとサーボアンプの信号の不一致

上位コントローラとサーボアンプ間で外乱ノイズが生じると、信号が不正確になり、パルス量の増加や減少が発生する可能性があります。この場合、位置がずれてしまうため、ケーブル周辺の環境や外乱要因の有無を確認しましょう。

4. 原点位置の設定ミス

原点位置の設定が不十分だと、制御系が誤動作し、意図しない位置ずれが生じる場合があります。サーボアンプの「偏差カウンタリセット」が原因で原点位置がずれることもあるため、定期的な原点リサーチが重要です。

5. ビジョンカメラの影響

ビジョンカメラを利用したトラッキングにおいても、位置ずれが発生することがあります。例えば、カメラの認識速度や通信速度がロボットの動きに追随できない場合や、キャリブレーションが正確でない場合、位置決めにズレが生じます。

ロボットの「許容モーメント」と「負荷イナーシャ」

許容モーメント

ロボットの先端に取り付けるハンドやワークには、モーメント(回転する力)とイナーシャ(動きにくさ)があります。ハンドの大きさや重量が大きいと、動きが鈍くなり、位置決めに悪影響を及ぼすことがあるため、ロボットのカタログに示される「許容モーメント」以下の仕様に合わせてハンドを選定することが求められます。

負荷イナーシャ

負荷のイナーシャが大きいと、急な加速や減速が難しくなります。例えば、モータ軸の中心から離れた位置にワークを配置すると、回転軸と負荷側の回転部分の比率(イナーシャ比)が増大し、動作が不安定になる可能性があります。過大な負荷イナーシャは減速機にも負担がかかるため、仕様の「半分以下」に抑えるのが理想的です。

力の制御とインピーダンス制御

産業用ロボットがワークに接触すると、過剰な力がかかり位置決めに影響が出ることがあります。インピーダンス制御は、この接触による力を適切に調整する制御方式です。以下の2つに分けられます。

受動インピーダンス制御

あらかじめ作業方向の剛性を高くし、それ以外の方向の剛性を低くする方法です。剛性をコントロールすることで、位置ずれを最小限に抑えます。

能動インピーダンス制御

ワークに接触した際、余分な力がかからないようにリアルタイムで力を調整します。一般的な力制御では、この能動インピーダンスが用いられます。

コンプライアンス制御とRCC機構

コンプライアンス制御

コンプライアンス制御は、ロボットの手先がワークの位置や向きに柔軟に追従する制御方法です。特に、自動組立などで、部品のはめ込み作業において軸ズレや軸倒れが発生した場合、コンプライアンス制御によって位置補正が可能になります。これにより、位置ずれによる組み立てミスを防ぎます。

RCC機構

RCC(Remote Center Compliance)機構は、手先にばねやダンパーを持たせることで、軸ズレや軸倒れを緩和し、柔軟に追従させる機構です。この機構を利用することで、ロボットが一定の柔軟性を持ちながら、正確な位置決めを実現します。

まとめ

産業用ロボットの位置決めには、メカやソフトの両方でさまざまな精度が要求されます。位置ずれが発生した場合、その原因を迅速に特定し、適切な対策を施しましょう。また、ロボットの仕様に適合したハンドやワークを選定することや、力制御やコンプライアンス制御といった精度向上の手法を活用することで、位置決め精度を高めることが可能です。

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