産業用ロボットのカタログを読み解くポイント：性能データの見方と注意点
産業用ロボットのカタログとは？
産業用ロボットのカタログは、製品性能や機能、仕様を説明するために各メーカーが提供する資料です。しかし、各メーカーの技術用語や表記が異なるため、初めての方にとっては分かりづらく感じられることが多いです。また、業界全体での規格化が進んでいないこともあり、カタログの情報が統一されていないケースも見られます。そのため、カタログを利用する際には、以下の注意点や基礎知識を理解しておくことが大切です。
公表されるデータとされないデータがある？
ロボットのカタログには、一般に以下のデータが記載されています。
公表されているデータ
完成された製品の構造や性能基準、記号、仕様など。
非公開のデータ
試験法や検査法など、性能評価の詳細な手法については未公開。
曖昧なデータ
速度や可搬重量、動作時間、精度などは「ある特定条件下」で測定されており、詳細な試験条件が示されていないことが多くあります。
このように、カタログの内容だけでは不明瞭な部分が多く、細かい性能評価や運用上の精度については、メーカーや専門業者へ問い合わせる必要があります。
カタログ記載データの注意点
産業用ロボットの性能データには、特定の環境や条件で測定した数値が示されていますが、使用状況によっては実際の性能が異なる場合があります。特に注意が必要な項目は以下の通りです。
位置決め精度
位置の精度は、センサの取り付けや部品の製作誤差に影響されやすく、データには設計上現れにくい誤差が含まれていることが多いです。
動作速度
速度についても、PTP制御やCP制御による違いがカタログでは不明瞭なことが多く、どのように運動に影響するのか確認が必要です。
再現性データ
再現性データも、ウォーミングアップ前か数時間稼働した後か、試行回数などの詳細が不明なため、参考値として受け取る必要があります。
カタログで知っておきたい主要なスペック項目と用語
1. 位置検出方式
ロボットの位置決めにおいては、位置検出方式が重要な役割を果たします。一般的には「サーボモータ」に組み込まれたエンコーダが位置を検出しますが、以下の2つの方式があります。
インクリメンタル型
相対的な位置検出方式で、動いた量に基づいて位置を検出します。電源を再投入した際には原点復帰が必要で、位置決め誤差が累積する傾向があります。
アブソリュート型
絶対的な位置検出方式で、電源が切れても現在位置を保持できます。誤差を抑えやすく、精度が高いため、産業用ロボットで多く採用されています。
2. 信号の出力方式
アブソリュート型エンコーダでは、信号出力方式として「パラレル出力」と「シリアル出力」の2つがあります。
パラレル出力
複数本の信号線を使用して高速にデータを伝送する方式です。
シリアル出力
1本の信号線でデータを送る方式で、ケーブル数が少なく済むため配線が簡便ですが、通信速度はパラレルよりも遅くなります。
3. 運動の精度
産業用ロボットの動作精度には「繰り返し精度」「軌跡精度」「絶対精度」の3つの指標が重要です。
繰り返し精度
同一条件で位置決めを行った際の測定値のばらつきです。JIS規格に基づき、最大値と最小値の差で評価されます。
軌跡精度
ロボットが描く軌跡の精度を指し、線を描いたときの揺れや位置ずれも評価対象です。
絶対精度
指定された座標までの移動量がプログラム指令と一致するかを評価します。カタログには繰り返し精度は掲載されても、絶対精度は公表されていないことが多いです。
まとめ
産業用ロボットのカタログには、購入・運用時の基礎データが書かれています。しかし、内容の一部には不明瞭な部分もありますので、特に位置検出方式や精度、運動のばらつきに関する情報は慎重に精査し、時には追加で情報を取得することも必要です。
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